
FPオフィス ながのココカラ 栗原です。
今回はまた住宅ローン金利について考えます。
バブル崩壊後住宅ローン金利は一気に下落し、平成28年にマイナス金利政策が導入されてからは歴史的な低金利水準が続いてきました。
ですがその頃から一貫して、収入や貯蓄額に余裕がない人が変動金利を選択するのは危険だとお話ししてきました。
その頃よくあった反応のひとつが、「金利が上がるということは給料も上がっているから問題ない」というものでした。
同じ考えをお持ちの方も多くいらしたかと思いますが、今でもそう思いますか?
この考え方は現実的ではないと当初より指摘してきました。今となればその発言の問題点に気付いている方も増えてきたのではないでしょうか。
では実際に、住宅ローン借入期間中に金利が上がった場合どうなるのかを考えてみたいと思います。
金利が上がれば給与も上がるのか

もはや過去の常識が常識とならないのが現実です。
アメリカの7月物価上昇率は8.5%と日本の上昇率をはるかに上回っていますが、同時に賃金上昇率も1年で5.2%上昇しています。
アメリカは30年間で賃金が約2.5倍になっていますが、日本はどうでしょう。
日本は世界主要33か国中最下位どころか唯一賃金減少しているのです。
給与は年々上がるもの、というのはもはや常識ではなく幻想だということを30代、40代世代は実感しているところだと思いますが、
「金利が上がるということは景気がよくなるということだから、給料も上がる」
というのもまた幻想なのだということにこれまで気付いている人は少なかったのではないでしょうか。
残念ながら、それが日本の現状です。
そしてようやく実感レベルとして気付き始めている人が増えてきているのだと思います。
金利が上昇した場合、負担はいくら増えるのか
仮に5年目に0.5%の金利上昇があった場合、6年目からの返済額は約8.3万円。
1.0%上昇の場合は約8.9万円、2.0%上昇時は約10.2万円となります。
給与が上がらない中で金利が上がったらどうなるでしょうか。
何かを節約するか、貯蓄を削っていくか、それとも副収入手段を得るかしない限り、負担は増え収支は悪化します。
本当に金利は上昇するのか
借入額が少額であればリスクも大きくありませんが、余裕のない世帯に限って借入額も大きいものです。
現実には、アメリカのように実質賃金が上がらず景気回復が見込めない日本の状況では、今すぐの利上げは難しいとの見方が大勢です。
少なくとも黒田総裁任期中の来年4月までは利上げには踏み切らないのではと考える人も多いでしょう。
しかしアメリカとの金利差は広がるばかりで、円安の悪影響も増しています。
本来であれば欧米のように利上げ、引き締めしていくのが正当も、それができないのが日本の現状なのです。
とはいえどこかのタイミングで本来の姿にすべく軌道修正、は十分考えられることでもあります。
今後痛みを伴う改革が実行されないとも限らないのではないでしょうか。
金利上昇に備えて今やるべきことは?

金利上昇に耐えられるか将来の収支を確認する
ただし上記に加えて、金利上昇局面において適切な判断と実行力を発揮できるということも重要なポイントとなります。
また上記に該当しない世帯は、今の生活収支と金利で問題がないからといってすぐにGOではありません。
変動金利の場合は上昇局面においてもキャッシュフロー(収支)に問題がないのか、金利上昇への耐性があるのかをライフプラン等を通して慎重に検討する必要があります。
固定金利選択の場合でも、既に長期金利は上昇し始めていますから、特に注文住宅等で引渡し、融資実行までに長期の期間を要する場合は今よりも更に金利が上昇している可能性も念頭に計画する必要があるでしょう。
既に変動金利で借り入れがある世帯も、今後の収支を確認する必要あり
既に変動金利で返済中の方にとっても、悩ましい問題になってくる可能性はあります。
「金利なんて上がらないだろう」、「金利が上がる時には給与も上がってるはず」などと軽く考えていた人が、今になって将来を不安視し始めているかもしれません。
コロナで就労環境や収入に影響が出た人もいるでしょう。
甘い見通しでマイホーム購入に踏み切ってしまったという自覚がある方は(もちろんそうでない場合も)、
場合によっては何らかの軌道修正も必要になってくるかもしれません。
今からでもライフプランのチェックは重要な意味を持つと言えるでしょう。
憂うも放置も問題あり

見て見ぬふり、「なんとかなるさ」、現実逃避、課題先送りも問題ありです。
いざ本当に立ち行かなくなってからでは打てる手も限られてしまいます。
何事も準備、計画が大事。加えて決断力、実行力も必要。
いざという時に慌てふためくのではなく、冷静に判断、行動できるように平時から備えておくことが大切なのではないでしょうか。
当オフィスには、「パンドラの箱を開ける決意をした」と現実に向き合う心積もりでご相談に来られる方も多いです。
現実を見るのが怖かったり、臭い物に蓋をしたいのは誰もが抱く感情でしょう。
見たくない現実に向き合うということは、人が思う以上に勇気のいる行動だと思います。
それでもライフプランを通して現実と向き合い、改善策を探っていく中で徐々に晴れやかな顔になり、最後は自覚と決意を持った明るい表情になる方を何人も見てきました。
見えない恐怖よりも、こわいものが見えている方が精神的には楽であり、前向きになれるのだなと感じます。
ドキッと思い当たる節がある方は、パンドラの箱を開けてみるのもよいかもしれません。