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火災保険料値上げがマイホーム維持費に与える影響

FPオフィス ながのココカラ栗原です。

今回はマイホーム維持費にも欠かせない火災保険の保険料値上げについて、考えます。

ここでも何度か触れてきましたが、2022年10月1日以降始期日(補償開始)契約分より、保険料がまた値上げされます。
2015年から今回で4度目の料率改定(多くの場合が値上げ)です。
さらに、契約期間についても最長5年に短縮され、こちらも実質値上げの要因となります。
今回は値上げだけでなく補償条件も改悪が目立ち、これまでで最大の改定、値上げ内容になる模様です。

値上げの背景としては、近年の災害増加による保険金支払いの増加で保険会社の収益が悪化しているというものですが、逆に言えばそれだけ火災保険の重要性も増しているということでもあり、補償内容と保険料との狭間で頭を悩ませるシーンがこれまで以上に増えるのかもしれません。

本件は既に火災保険にご加入の方にも関係する話ですが、今回は特にこれからマイホームを検討される方に、今後のマイホーム維持費として理解を深めていただきたく、まとめてみました。

火災保険改定のポイント

改定内容は保険会社により異なりますが、各社ほぼ共通した改定点が3つあります。
1.保険料率の改定
2.保険期間の短縮
3.一部自己負担額の引上げ
特にマイホーム取得者にとって、2.の保険期間の短縮は大きな変更点ということになりそうです。
では上記ポイントを確認していきましょう。

2022年10月以降、火災保険料 約11~13%の値上げ

まず、保険料率が改定されます。
具体的な料率は保険会社により異なりますが、火災保険を取り扱う損保会社のほとんどが同じような値上げを予定しています。
火災保険の保険料は、都道府県や建物の構造(木造、鉄骨など)によって異なるため一概には言えませんが、全国で平均11~13%の値上げとなる見込みです。
一部の都道府県、構造や築年数によっては保険料が下がるケースもあるようですが、今回も多くの場合が値上がりとなりそうです。

保険期間が最長10年から5年に短縮

前述の保険料改定よりもインパクトが大きいのは、保険期間の再短縮です。
2014年までは最長36年の契約が可能で、マイホーム取得時は住宅ローン期間に合わせて長期一括で支払うことができました。
2015年に最長10年に短縮された時も大きなインパクトでしたが、今回はそれ以来の短縮で、ついに5年にまで縮められてしまうことになります。
近年、日本は想定外の災害に何度も見舞われてきていますが、将来的にも自然災害のリスクは大きく変化していく可能性があり、長期的なリスク評価が難しくなってきているのです。
すなわち保険会社にとっても長期で補償を約束することはリスクになるということです。
実際に、長期契約の場合は保険料改定や商品改定を反映できないため、保険会社の収支改善の遅れにも繋がっているというのが現状なのです。

保険期間の短縮、これは家計にとっても大きな痛手となります。
保険料が上がっている上に、(長期一括払の場合)5年に一度、更新手続きが必要になり、保険料負担が生じるということです。
また、保険料の払い込みは月払よりも年払、年払よりも長期一括払が保険料が割安となりますが、契約期間が短くなることでこの割引率も低くなってしまいます。
つまり、保険期間の短縮も実質値上げということになるのです。
更には今後も保険料改定が続くことも十分に考えられますし、もしかしたら長期契約自体が不可となってしまうこともあるかもしれず、更なる値上げに繋がる可能性も否定できません。

「破損・汚損など、不測かつ突発的な事故」の免責(自己負担)金額の引き上げ

火災保険に加入する主な目的は、火災や地震時の住宅や家財の補償ですが、実は一番保険を使うシーンが多そうなのが、「破損・汚損」です。
補償対象が建物の場合、ドアや壁、ガラスなど、
補償対象が家財の場合、テレビや家具など
が偶然な事故等により破損、汚損した場合、損害額が補償されるというものですが、
これらの保険金支払いも収益悪化要因の一つになっているようで、2022年10月以降は各社免責金額が引き上げられます。
つまり保険を使っても自己負担割合が増すということです。
多くは今まで1万円の免責でしたが、各社5万円の免責となりそうです。※改定がない会社もあるようです。

また、一部保険会社では「事故時諸費用特約」の補償範囲見直しも予定されており、破損・汚損時は補償の対象外となるようです。
この特約があることで、これまで免責1万円の部分をカバーできていたケースがこれも当てにならないということで、やはり自己負担割合が増えるということになります。

保険料はどれくらい上がるのか

前述の通り、保険料は保険会社はもとより都道府県や建物構造等により異なるため、一律にお伝えすることはできませんが、
所在地:長野県
構造:木造一戸建
保険金額(建物金額):3000万円
面積:100㎡
の条件で、地震保険有、その他オールリスク対象で簡易試算した場合、※家財保険は含まず
改定前の2022年9月始期日の保険料は、10年長期一括払で約38万円
2022年10月始期日の保険料は、5年長期一括払で約20万円
でした。
ただし、保険会社によっても保険料差はあります。
ちなみに鉄骨構造の場合は、40%程度割安となりそうです(条件等々により異なります)。
上記ケースの場合、5年間で2万円の負担増ということになります。※更新時保険料等考慮なしの単純計算につき、実際の保険料とは異なります。
ちなみに今回保険料率が大きく引上げとなる大阪府で上記試算をした場合、5年間で約9万円の負担増となりましたので、長野県の負担増割合は少ない方と言えそうです。
上記はあくまで一参考ケースですが、具体的なイメージとしてご参考になればと思います。

さてこの負担増をどう見るか、ですが、単純に総額負担は大きく増えることになりますし、前述の通り更新時に料率改定や商品改定があれば更に負担は増えることになります。
長期一括払が一番お得な払込方法となりますが、補償内容によってはある程度まとまった金額となるため、維持費の一つとして心積もりしておきたいものです。

安易な補償削減にはリスクあり

既にマイホームをお持ちの方は、保険期間の残年数等によっては値上げ前に見直すというのも一つの手ですが、これからマイホームを計画されている方は、完成引渡しが9月中にならない限り値上げを受け入れる他ないということになります。
そこで注意したいのが、契約する補償内容についてです。

保険料をなんとか抑えようと、一部補償の削減を検討される方もあるかもしれません。
最近はさすがに地震保険を付けない方は稀になってきているかと思いますが、例えば水災補償をなくしたり※、破損・汚損補償をなくしたりすることで保険料を抑えることが可能です。
※商品改定により「補償なし」とすることができなくなった会社もあります。

水災補償の必要性

水災補償を付けるか付けないかを検討する際には、少なくともハザードマップで所在地の水害リスクを把握しておくことが必須となります。
しかしこの点について、確かに保険料は安くなりますが、個人的には削減はおすすめしません。
例えリスクが少ないエリアでも、水災補償は付けておくべきと考えています。
理由としては、都市型水害のリスクが増しているからです。
ゲリラ豪雨で排水が追いつかず、マンホールからあふれ出した雨水による浸水被害例や、マンション2階排水溝に雨水が逆流して部屋の中に水が入り込んだケースもあります。
私が水災補償がなくてもよいと考えているのはマンションの6階以上の場合のみです。

破損・汚損の利用シーンは減る可能性

一方、「破損・汚損」は前述の通り、使えるシーンが多いためあった方がよいと思いますが、今回の改定で免責金額が5万円となりますので、価値が下がるのは否めないと思います。
壁やドア、ガラスの修理などは5万円以内で収まることも多いので、保険料を抑えたい場合、今後は「破損・汚損」なし(事故時は全て自己負担)とするのも選択肢の一つにしてもよいかもしれません。

建築会社から案内された火災保険は特に補償内容に注意

これは建築会社さんにより温度差があるかもしれませんが、積極的に自社で火災保険を案内している会社であれば、充実した保障内容をベースに案内されるかもしれません。
逆に、火災保険にあまり力を入れていない会社からの案内の場合、場合によっては補償内容が大幅に削減されているケースもあるかもしれません。
少しでも諸費用を抑え、「住宅販売の足かせにならないように」との考えが働いているかもしれませんし、資金計画に余裕がない場合もそのような案内をされるかもしれません。
特に水災補償については前述した通り、例えハザードマップでリスクが少ないエリアだとしても安易に補償なしとすることがないように、十分に検討していただきたいと思います。

家財保険は必須ではないが、要検討項目

ここでは家財保険には触れてきませんでしたが、こちらも個人的には補償があった方がよいと考えています。
特にこれまではやはり「破損・汚損」が建物補償以上に身近なリスクとしてありましたので、価値は大きいと思っていましたが、この点も同じく今後は5万円が自己負担となります。
ただ、やはり火事や災害時に家財の再調達も必要になる訳ですから、最低限の補償はあった方がよいのではないでしょうか。
家財保険については、準備すれば当然保険料も上乗せになりますが、個人的には家財の保険金額は建物と違い評価額以下でもよいと思っています。
少なくともないよりはあった方がいいでしょう。
また、家財保険は「家財のみ」で単体契約も可能なため、新築時初期費用や保険更新時の保険料負担を軽減したいのであれば、家財保険のみ後から加入するのもありです。
ただ、後回しにすると熱も冷め、結果加入し損ねる人も多いかもしれませんので注意が必要です。

マイホームを持ち続けるには、維持費も必要

住宅は、建てて住宅ローンを返済するだけで維持できるものではありません。
確かに今は金利が低く、頭金がなくてもマイホームを手に入れられる時代です。
ですが、自動車には車検、人には健康診断が必要なように、住宅も手入れをしないとせっかくのマイホームも残念なことになります。
火災保険料も家計においては負担となるため節約したいところですが、近年の想定外の自然災害を目の当たりにし、もしも我が家が被災したら...と考えるとやはり節約すればよいというものでもないのだと思います。

火災保険の改定について、まとめ

・2022年10月~火災保険料が全国平均11~13%引き上げとなります。
・保険期間が最長5年に短縮されます。
・一部補償で自己負担割合が増えます。
・保険料節約のための補償内容削減には注意が必要です(特に水災)。
・建築会社から案内された火災保険は補償内容が適正か注意し、十分に検討する必要があります。
・固定資産税、修繕費と併せ、火災保険料もマイホーム維持費として備えが必要です。

マイホームは住宅ローンを滞りなく返済することはもちろんのこと、維持費についても正しく理解し準備する必要があります。
夢のマイホームが負の温床にならないよう、余裕を持った資金計画とすること、それが難しい場合は将来的なキャッシュフロー(お金の流れ、収支)、ライフプランを確認し、可能な限りリスクを排除した上で計画することが大切になってくるのではないでしょうか。

今後益々マイホームを取得、維持することのハードルは高くなっていくのかもしれません。

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