
FPオフィス ながのココカラ 栗原です。
今回は住宅ローン金利タイプの選択について、改めて考えてみたいと思います。
これから住宅ローンを検討する方にとって、「変動金利か固定金利か」は永遠のテーマの一つと言ってもいいかもしれません。
もっとも、住宅購入計画が既に進んでいる方の多くは変動金利の想定であることが多いようですが、白紙の状態から計画を進めようとしている方は「どちらがいいのかよくわからない」とお考えの方が多いのではないでしょうか。
ちなみに、計画が進んでいる方は変動金利想定が多いという理由については、過去記事にて解説済みです。
<過去参考>2020.04.12 『住宅ローン、変動金利、固定金利どちらを選ぶべき?』
実際に住宅金融支援機構の調査によると、2019年度の新規貸出のうち、75.2%が変動金利型であり、固定期間(2~10年)選択型も含めると実に94.5%が(広義の)変動金利型を選択していることになります。
では本当に変動金利の選択が正しいのか、再度考えてみたいと思います。
変動金利を選んでいい人、選んではいけない人

<過去記事参考>2020.04.15 『知らないと怖い変動金利の落とし穴』
変動金利を選んでいい人
・借入金額が少ない
・返済期間が短い
・資産が多くある、またはまとまった収入見込がある
変動金利を選んではいけない人
・借入金額が多い
・返済期間が長い
・不確定要素※が複数ある
※子の人数、妻の就労計画、夫の転職計画など
変動金利は、仕組みを理解した上で金利が上がっても耐えられる財力が必要といえます。
「点」ではなく「面」で問題がないかを確認する

ここで言う「点」とは、「今現在」、または「現在~当面10年程度」の視野、「面」とは、「現在~老後(生涯)」までの視野を意味します。
「面」で問題アリは、正しい資金計画ではないということ

これは変動金利、固定金利に限らず言えることですが、少なくとも面で収支に問題がある場合には、変動金利はおすすめできません。
リスク耐性の有無を確認
これは、想定外のリスクにも耐えられるかというリスク耐性を確認するためにも重要なことだと考えているからです。
そして、試算上問題がない場合は、「変動金利を選択肢に入れても問題はなさそうです」とアドバイスしています。
そもそも自分たちは変動金利を選んでも問題ないタイプなのか、という冷静な判断に加え、ライフプラン等を通して生涯にわたって収支に大きな問題はないと判断できる場合に初めて「変動金利を選んでもよい」ということになるのかと思います。
もっと言うと、金利上昇時のリスクを自分たちが負えるかどうか、ということです。
変動金利を選択するということは、金利上昇のリスクは自分たちが負う、ということです。
固定金利であれば金融機関がリスクを負うことになりますが、変動金利では債務者にリスクが転嫁されます。
そう考えると低金利時に金融機関が変動金利をすすめるのにも納得がいくのではないでしょうか。
ライフプランに問題がなければ変動金利一択なのか

おそらくハウスメーカーや銀行ではほぼ変動金利(固定金利期間選択型含む)をおすすめされるのではないかと思いますが、私はその場合も変動金利一択ではなく、選択肢の一つとして、最終的には固定金利も含め検討することをおすすめしています。
その訳とは...。
変動金利も固定金利もライフプラン上では大差ないケースが多い
ただし前述した通り、変動金利の想定金利は厳しめに設定していますので、当然想定よりも低い水準で金利が推移した場合は、変動金利の方が総支払額が少なくなるケースもありますし、逆に想定以上の急激な金利上昇があった際には固定金利の方が総支払額が少なく済むということも有り得ます。
実際にバブル末期の1991年には金利8.5%となりましたが、この時は僅か4年程で3.6%の急激な金利上昇が起きたという事実もあります。
変動金利と固定金利、どちらを選択するべきか

また、本来のセオリーで言えば、「低金利時代に選ぶべきは固定金利」です。
低金利時に金利を固定してしまえば、将来世の中の金利が上昇しても自分たちの住宅ローンは低金利のまま、だからです。
逆に高金利時は変動金利を選ぶのが正解です。高い金利で固定してしまうと、世の中の金利が下がっても自分たちの住宅ローンは高金利のまま、ということになるからです。
超低金利時代の現在は、固定金利でさえ1.5%を切るような低い水準です。とは言え変動金利は当然に更に低く、0.5%を切るようなところもあります。
ライフプラン上に問題がないのであれば変動金利の超低金利の恩恵を受けるべきと考えるのが普通かもしれません。
敢えて固定金利を選ぶメリットとは
●長期にわたるライフプランが立てやすい
金利が固定されるため、変動金利より将来の計画も立てやすいです。
●金利の動向を気にしなくてよい
現在は超低金利、金利は底の底。上がることはあっても今より下がることはほぼないか、あったとしても極僅かと考えられるため、金利の動向を心配する必要はありません。
●繰上げ返済を考えなくてもいい
場合によっては繰上げ返済を活用しても構いませんが、変動金利のように金利上昇時のリスクヘッジ手段の一つとして繰上げ返済を想定したり、迫られたりすることはありません。
●フラット35(全期間固定金利)は危機対応に強い
図らずともコロナ禍で見えた危機対応の強さ。
固定金利は一見変動金利よりも高い金利ですが、変動金利も本来の金利(店頭金利)は概ね2.5%程度です。そこから優遇金利が適用され、1%以下の金利が得られている訳ですが、コロナの様な想定外の有事や、病気等で収入が減ったり職を失ったりして返済が滞ってしまうと優遇金利は無効となり、世の中の金利が上がっていなくても金利が上がる事態となってしまいます。
実際にコロナ禍で返済を滞納される方も増えています。
その点、固定金利は仮に滞納があっても金利が上がることはありません。※遅延損害金が発生する可能性はあります。
また、フラット35の場合は国の独立行政法人(住宅取得支援機構)が提供している住宅ローンのため、有事の際には救済制度が用意される可能性が高いです。
実際に、コロナ禍においては金融庁が住宅ローン支払困難者に向け、返済条件変更等柔軟な対応を行うこと等を各民間金融機関に要請しましたが、強制力はなく、各金融機関により対応が異なるというのが実情でした。
一方フラット35は、返済方法の変更や返済特例の救済措置が用意されました。
変動金利が向いている人とは
つまり、
・潤沢な資金がある
・金融リテラシーがある
こんな人は、変動金利が向いているでしょう。
例えば、一言に繰上げ返済と言いますが、これは案外難しい判断が必要になります。
「金利が上がってきたから繰上げ返済しよう」と簡単に考えがちですが、いざ返済となると手元に返済資金があったとしても「このまとまったお金をローン返済に充当すべきななのか」という迷いが生じるかもしれません。
・同じタイミングでこどもが留学することになった
・上の子の進学は確定したけど下の子の教育計画がまだ定まらない
・車の買換え、家の修繕費が重なる
・ローンは完済させたいが、完済すれば団信(保険)もなくなる 持病があり完済すべきか
・ローン返済より投資で殖やす方がキャッシュフローは良いのではないか、しかしリスクもある
ローンは軽減できても想定外の教育費に資金不足となり教育ローンを借りることになったり、車の買換えでローンを組むことになるようでは、繰上げ返済が正しい判断とも限らないかもしれません。
金利上昇時や繰上げ返済時は、こうした判断力が必要になることも想定しておきたいものです。
ちなみに、「金利が上がってきたら固定金利に変えればいい」という声もよく聞きますが、これもそんな簡単な話ではありません。
一般的に、金利が上がる際には固定金利が先行して上がるからです。
元々変動金利よりも高い金利の上、金利上昇時は固定の方が先行して金利が上がるのですから、これも難しい判断になるのではないでしょうか。
いざという時に一部繰上げや一括返済をできる財力に加え、ある程度金融リテラシーのある方は積極的に変動金利を選択されてもよいのではないかと思います。
逆に金融リテラシーに自信がない方は、資金に余裕があっても固定金利の安心を選択するというのも間違いではありません。
価値観や性格なども考慮しながら検討してみては

そこに不安のない方は、変動金利で良いのではないでしょうか。
経済動向や市場の動き、投資情報等に疎く、生涯設計にも自信が持てない方や、安定志向の方、判断力に自信のない方などは、固定金利の方が向いているかもしれません。
仮に低金利が続き、固定金利だったことで結果的に余分に金利を負担したことになったとしても、「安心を買った」、「ローンに保険をかけた」と考えられる方は固定金利でもよいと思います。
そもそも変動金利に不向き(リスク耐性が低い)の方は固定金利、
資金潤沢、金融リテラシー有の方は変動金利、
安定志向の方は固定金利。
価値観や性格なども考慮しながら検討することも大切なのではないでしょうか。
ご参考になりましたら幸いです。