
FPオフィス ながのココカラ 栗原です。
もう皆さんご存知かと思いますが、火災保険が2022年度より値上げされる見通しです。
近年多発する自然災害の影響で、毎年の値上げ情報には慣れた感もありましたが、
今回はそれに加え保険期間も短縮化される見通しで、個人的にはそちらの方がインパクトが大きいなと感じています。
2014年までは最長36年の契約が可能で、マイホーム取得時は長期一括で支払うことができました。
割引率も大きく、何なら住宅ローンに組み込むこともできるということで、これからマイホームを取得する方にとってはうらやましい限りだと思います。
2015年からは保険期間が最長10年まで短縮され、今に至ります。
ですので、2015年以降に住宅取得された方は、長くとも10年に一回火災保険の更新保険料負担が生じる訳です。※地震保険は最長5年なので5年毎に更新が必要です。
それが、2022年(秋の改定と思われる)以降は5年毎の更新になる見通し、ということです。
保険料率も上がっていますし、長期一括の割引率も期間短縮により下がっているとあり、住宅取得者には負担感が拭えない維持費となりそうです。
さて、今回お話したいのは火災保険の件ではなく、「住宅維持費」の盲点についてです。
これをきっかけに、目を向けていただきたいなと思っています。
特に戸建て取得をお考えの方はぜひ最後までお付き合いください。
マイホームは買ってからもお金がかかる

購入時にはイメージができなかったのでしょう。
無理もありません。
マイホーム購入時のマインド
いざローンの審査が通りマイホーム購入の契約が済むと、安心するのか急に自信が付くのか!?
それとも高額な金額を目にするうちに金銭感覚が麻痺してくるのか、そんな不安はどこへやら。
女性は内装やインテリアに懲り過ぎてしまって、追加費用が想定以上に膨らむ、ということもよくあることです。
購入後の維持費を丁寧に教えてくれる営業員の方もそう多くはないと思います。
もうこの時点では皆がマイホーム取得に向けてまっしぐら、です。
それでもローンは通った訳で、無事マイホームも手に入った。後はローンを予定通り返していくだけ。
目の前の資金計画ややり繰りで頭がいっぱいになり、先々の具体的な維持費までは想定しきれていない方が多いのでしょう。
余裕のない資金計画で購入した人には痛い維持費
こどもが成長し、塾だのなんだのって、何かと支出も増えていきます。
固定資産税も4年後には優遇もなくなり負担感は増します。
そして忘れた頃に火災保険の更新もやってきます。これが今後は5年おきになりそうだと言うのです。
さらには、10年を超える頃から新築時に揃えた家電や、給湯器などの住宅設備も次々に壊れて買換えの必要が出てきます。
加えて住宅自体も年数の経過とともに劣化していきます。
これからこどもにお金がかかるという時に、固定資産税の増額(本来の金額に戻っただけです)、火災保険の更新、家電や住宅設備の買換え、屋根の修理...車の買換えや生命保険の更新が重なる人もいるかもしれません。
住宅ローンが変動金利の方は、金利が上がることも可能性としてはあります。
ある程度貯金に余裕のある方なら問題ありませんが、思った以上に出費が重なるのは事実、負担感に感じるところではないでしょうか。
昔のように給与も着実に増えていれば良いのですが...いかがですか?
余裕のない資金計画でマイホーム取得した人には、頭の痛い問題になりそうです。
想定するべき住宅維持費
広義の住宅維持費ということになりますが、冷蔵庫や洗濯機など、住宅に付随して欠かせない家電も多いかと思います。
困ったことに、購入時期が同じということもあり(新築時の購入)、不具合が出るタイミングも重なるものです。
日々の生活に欠かせないものも多く、出費が痛いから我慢する、というわけにもなかなかいきません。
家電製品は、商品にもよりますが、大きいもので10~25万円程度かかるものもあります。
もちろんこれらの費用は何もマイホーム取得者に限ったものではありませんね。
まずはイメージしやすいところからお話しました。
次に住宅設備です。
給湯器など、高額な物は全交換時に10~20万円程度かかると想定されます。
エコキュートなどでは、40~50万円程度かかることも想定しておかなければなりません。
賃貸の時には借主負担のなかったこれらの費用も、マイホーム取得後は自己負担になります。
そして、一番大きいのが外壁や屋根などの住宅修繕費です。
最近はメンテナンスフリー建材を使用しているハウスメーカーさんも多く、大規模修繕が必要になる年数は延びていることも多いですが、
通常、修繕費の目安としては10年~15年に100~150万円が必要とされています。
戸建てマイホームの盲点、住宅修繕費

契約時に将来の修繕費を丁寧に説明してくれる営業員がどれくらいいるでしょうか。
教育費がかさむ時期だったり、車の買換え時期と重なったりで、思うように修繕できないご家庭が多いようです。
「修繕積立金」の必要性
大手ハウスメーカーでは長期のアフターフォローを強みとしているところもありますが、
10年、20年など途中の有償修繕が前提になっていることも多く、これらの修繕費を捻出できないご家庭が多いため、結果的にアフターフォローとして機能していないというのが実態だったりします。
よくよく考えてみてください。
車でも車検がある、人でも健康診断、人間ドックを受ける、住宅だって手入れが必要なのは当然と言えば当然ですよね。
せっかくこだわって無理して理想通りの素敵なマイホームを手に入れても、手入れされない住宅は劣化していくばかりです。それってどうなんでしょう。
車なら買い替えるという手もありますが、住宅でそれが可能な人は多くないでしょう。
高額な買い物だからこそ、高額な維持費がかかるのももっともなことです。
ですが、住宅は手に入れたことで満足し、ローンを返していくことで頭がいっぱいになりがちなようです。
貯蓄に余裕がないなら、先を見越してマンションのようにきちんと積み立てていくことも必要です。
こどもの教育費は誰に忠告されなくとも多少無理してでも積み立てしたい、学資保険に入りたい、という人が多いようですが、住宅はなぜか忘れられる傾向にあるようです。
戸建てできちんと修繕積立をされているご家庭を見たことがありません。
もっとも、名目と手段は何でもよく、貯蓄があれば何ら問題のない話だということは言うまでもありません。
マイホームを購入する時に考えておくべきこと

それでいいのでしょうか?
本来は、こういう時こそ「点」ではなく「面」で考えるべきです。
住宅購入費、借入金額、住宅ローン種類、生命保険、教育費、老後生活費、住宅維持・修繕費、車購入費などなど。
大きな借金をする場合も、キャッシュで大きな金額を支出する場合も、どちらにせよ大きな金額を支出することになる住宅購入。
当然、上記の費用の支出にも大きく影響する訳です。
毎回言いますが、人生は住宅購入が全て、ではないはずです。
マイホーム取得計画が具体化すればするほど、焦点は狭まっていきます。
そうなる前に、広い視野で、「面」で将来のことを見定めておくことが大切です。
当オフィスの総合コンサルティングでは、火災保険はもちろん、家具・家電購入費、住宅修繕費、自動車購入費・維持費(長野の場合は冬タイヤの購入費まで!)を支出として計上しています。
マイホームが取得できても、将来の大きな出費に困惑することがないよう、見落としがちな住宅修繕費についても必要性を認識し、キャッシュフローに落とし込むことが大切だと思っています。
火災保険値上がりのニュースに、住宅維持費や将来の収支にも目を向けていただくきっかけになってほしいと思っています。