
FPオフィス ながのココカラ 栗原です。
みなさんは医療保険に加入されていますか?
おそらく多くの方が何らかの医療保険に加入されているのではないかと思います。
でも医療保険って数が多すぎませんか?
いろんな種類、商品があって、何を選べばいいのかわからない、という方も多いのではないでしょうか。
そもそも、医療保険って必要なの?という疑問を持っている方も多いかもしれません。
私は答えは一つではないと思っていますが、今回は保険の中でも身近な商品である医療保険を、私見も含め考えていきたいと思います。
日本の公的保障は意外と手厚い
世界では、例えばアメリカなどのように民間保険中心の医療保険制度の国や、無保険者が多い国もあります。
そのような国では、民間の保険に加入していない場合、お金の有無が生死を分ける、ということが現実に起きるのです。
そのことを思えば、日本の皆保険制度は優秀な制度だと言えます。
医療費の自己負担

また、現在1割負担となっている75歳以上の負担については、先日2月5日の政府閣議で医療制度改革関連法案が決定されましたので、単身で年収200万円以上の人については自己負担が2割に引き上げられることになります。
高額療養制度

※1日から末日まで
上記の例でもわかるように、仮に年収370万円~770万円の人が100万円の医療費がかかった場合、3割負担で窓口負担は30万円となりますが、高額療養費制度の適用により、実際の自己負担額は87,430円になるということです。
ただし、食費や個室ベット代(差額ベット代)、交通費、自由診療費、先進医療費などは自己負担となります。
医療費控除制度

医療費には、健康保険では自己負担となる入院中の食事代や、一部の交通費なども含めることができます。
控除額の計算式は上記の通りです。
ただし、保険給付金、高額療養費や出産育児金等は支払い医療費から差し引く必要があります。
傷病手当金や出産手当金は差引く必要はありません。
また、セルフメディケーション税制を適用する場合は、医療費控除の適用はできません(どちらかの選択適用)のでご注意ください。
医療費が100万円かかると言われればちょっと不安になってしまいますが、公的保障のおかげで自己負担は思ったより少額で済むのです。
なおかつ世帯での医療費負担が一定額を超えた場合は所得控除も受けられる訳ですから、日本の公的保障は意外と手厚いということが言えるのではないでしょうか。
極論、医療保険は必要ない

むしろ、貯蓄がない方こそ保険が必要になるのです。
しかし保険を準備するには保険料負担も発生するというジレンマもあり、その塩梅は難しいところかもしれません。
さて、本来はそれほど重要度が高くない医療保険ですが、多くの人(感覚的にはほとんどの人)が加入しているのはなぜでしょうか。
前述の公的制度を知らなかったという方も多いのかもしれませんが、それ以外にも理由はありそうです。
「差額ベット代」の誤解
結論から言うと、先進医療費や自由診療費は高額になるケースも考えられるため、保険で備えておくと安心です。
詳細は割愛しますが、どちらも高額になるのはがん治療のケースが多いかと思いますので、がん保険で備えるのも手かと思います。
ちなみにがん保険に関しても様々な商品があり、考え方も多様です。私にも意見がありますが今回はこの点には触れません。
ではその他の自己負担はどうでしょうか。
交通費は、がん等で高度な治療を受ける際、遠方の医療機関に入院、通院することも考えられ、多少高額になることもあるかもしれません。
食費は家にいてもかかるもの。
入院中の食費は、一般の方で1食につき460円※、一日3食で1,380円ですから、家の食費より安いと感じられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
※難病者や非課税者は軽減されます。
さて、問題は「差額ベット代」です。
金額は病院により異なりますが、平均は1日あたり約6,500円。
平均ですので、当然これよりも高額なケースもあります。
これを高いとみるかどうかはさておき、
差額ベット代に関しては誤解も多いように感じています。
本来、差額ベット代は患者の希望により利用した場合にのみ請求されるものです。
ですので、下記のようなケースは自己負担にはなりません。
●治療上必要とされる場合
●病院都合の場合
例えば、大部屋が満室の場合や、感染症等で院内感染防止を理由とするものなどです。
ただし、同意書にサインをした場合には支払いが必要となりますので注意が必要です。
患者本人や家族の希望で個室を選択する場合は、自己負担となることは考えておかなければなりませんが、そうでない場合は、個室だからといって自己負担になるわけではないのです。
また、希望による個室使用や、同意書にサインの上使用した際の差額ベット代は、医療費控除に含むこともできませんのでご注意ください。
ということで、差額ベット代に関しても闇雲に心配する必要はありません。
長期入院の際等に個室ベットで療養したいと考える方は、貯蓄か保険で準備しておくとよいでしょう。
入院日数の短期化
1984年度は54.6日でしたので、約半分に短期化されたことになります。
短期化の原因としては、
・医療技術の進歩
・政府による医療費抑制政策(入院短期化を目標)
が考えられます。
後者に関しては、入院初期の方が病院の収入となる診療報酬が高く、入院日数とともに徐々に報酬が低くなっていく仕組みとなっているため、病院の収益を考えた場合、長期の入院はなるべく回避したいということになるのです。
入院を短期化して回転率を上げれば、病院の収入も増えるということです。
それでも医療保険に入っておいた方がいい人
とはいえ、入院は身近なリスクであるためイメージしやすいこともあってか、多くの方は何かしらの医療保険に加入されているのではないでしょうか。
私も加入しています。
いざという時、保険から給付金が受け取れれば助かるのは確かですが、それもタダではありません。そのために保険料を負担する必要があります。
時々、保険料支払い予定総額と、保険料相当額を貯金した場合の総額を計算し、想定される給付金に見合うかどうか比較検討される方がいらっしゃいますが、そういう思考の方は医療保険に入る必要はないと思います。
損得の損が気になるのであれば、いざという時は貯金で賄えばよいのです。それなら損はありません。
貯蓄の有無にかかわらず、加入しておくとよい人は、
・いざという時、貯蓄に手を付けたくない人
・入院時、お金の心配をしたくない人
・心配性の人
こんな考えや性格の方は、医療保険に加入しておいてもよいかもしれません。
また、少子高齢化により、今後も高齢者の自己負担割合が増えていく可能性もあるという点も、検討材料の一つになるかもしれません。
加入するならどう選ぶべきか
2018年6月1日時点で、日本で営業する保険会社数は41社。
一つの会社の中にも複数の医療保険商品が存在するなど、あまりに商品が多く、比較しようにも何を基準にすればよいのかわからない、と感じている方も多いはずです。
ここからは私見も含みますが、基準とする二つの考え方を紹介していきます。
どんどん新しいものに見直していく前提
先述したように、医療保険分野は進化が激しいですので、常にブラッシュアップすることで意義のある保障内容にしておくという考え方です。
昭和の時代の古い医療保険では、20日以上入院して初めて保障されるという内容でした。
入院日数が短期化している現代では、このような内容では役立つシーンはかなり限定的といえます。
極端な例でしたが、現代においては1年前の保険がもう古いと言われてしまう程進化のスピードが早いですので、常に最適化しておくことは大切だと言えるかもしれません。
ですが、私はこの考え方に否定的です。
一言でいうと、〝きりがない〟からです。
今日最新の保障内容でも、1年後、下手すれば半年後には最新ではなくなっています。
その都度見直すといっても健康状態により加入できるとも限りませんし、加入できたとしても通常年齢が上がるにつれ保険料も上がります。
しかしなぜそんなに保障内容が新しくなっていくのでしょうか。
確かに見直すだけの価値がある場合もありますが、多くは〝重箱の隅つっつき〟です。
あの商品よりもこちらの方がより多く給付金が出る、こちらの方が保障範囲が広い、などといった感じです。
保険料を負担する訳ですから、せっかくならより手厚く給付される方がよいと考えるのは当然でしょう。
でも保障を良くするということは、多くの場合保険料も高くなるということです。
ケースによっては保障アップとともに保険料も安くなることもありますが、見直しの度にそれが可能な訳ではありません。
その保障は保険料を上げてまで準備が必要な内容でしょうか。
思い出してください。極論、医療保険は不要なのです。
基本は貯蓄でカバーすればよいのです。
重箱の隅をつつき始めたり、欲に目がいってしまうと、本来の意味を見失ってしまいます。
この方法がいけない訳ではありません。
どうせ入るならより充実した内容を、という価値観であれば、この方法で準備されればよいと思います。
営業担当の方から数年おきに見直しを勧められる方はいませんか?
素晴らしいアフターフォローですね。でももしかしたら、そういう営業手法なのかもしれません。
見直しの都度、営業報酬が得られる訳ですから。
ちょっとうがった見方でしょうか。失礼しました。
必要最小限の準備で見直さない前提
あれこれ欲張らず、必要最小限の保障を準備するという考え方です。
なるべくシンプルに、合理的に。
だからといってなんでもよい訳ではありません。
この考え方をベースに、より条件のよいものを選択していきます。
この保障必要かな...と迷ったら、基本に立ち返ります。
極論、医療保障は必要ないのだから、欲に惑わされない、損得で考えない、が基本です。
ただし、「見直す必要がない」と言っている訳ではありません。
見直す意義があるものであったり、見直せるチャンス(健康状態など)があるなら、必要に応じて見直せばよいと思います。
ですが、必要最小限の保障を準備するという基本的な考え方に立ち返れば、そうそう見直しの必要はないのではないでしょうか。
保険を損得で考えてはいけない
医療保険で言えば、例えば〝この特約を付けておけばこの病気で入院した時に特約がない場合より多く給付金が貰える〟と言われれば、〝そりゃ多く貰える方がいいよね〟となりますよね。
この時点で、損得勘定の思考に引っ張られているかもしれません。
確かに受給時には、〝特約付けといてよかった~〟となるでしょうが、それがないと困るようなものでしょうか。〝得をしたい〟という無意識の感情はありませんか?
同じ保険料なら当然ある方がよいですが、保険料を上乗せしてまで準備する必要があるものなのか。
そして結果、それは本当に「得」になることなんでしょうか。
もちろん、保険料を追加してでも価値がある、と思える場合は追加してよいと思います。
でももし〝元を取ろう〟なんて発想があるのであれば、そもそも保険なんて入らなくてよいと思います。
損をしたくないなら有事の際は貯金で賄えばよいのです。
本当に必要な保険とは

それでも加入する一定の意義はあると思いますし、加入することを否定もしません。
その上で、加入するのであれば損得で考えず、必要最小限の保障をシンプルかつ合理的に準備するのがよいのではないかというのが私の考えです。
念のため付け加えますが、価値観は人それぞれですので、他の手段を否定もしません。
ここでそもそものことを考えてみます。保険の必要性、意義って何だろう、です。
繰り返しになりますが「医療保険は極論必要ない」との言葉、もっと極論を言えば、「保険は必要ない」と言える場合もあります。
死亡時であっても就労不能時であっても、貯蓄で収入減をカバーできるのであれば、保険は必要ないのです。
でも、何千万という貯蓄を用意するということはなかなか簡単なことではありませんし、仮に貯蓄が何千万とあった場合でも、その貯蓄に色が付いているものであればそれは無いに等しいと言えます。
色が付いているとは、「住宅購入資金」だとか「教育資金」、「老後資金」といった具合に、用途が決まっている、名前が付いた貯蓄という意味です。
それら色付き(名前付き)の貯蓄を有事の際に生活費に充てるわけにはいかない、という場合は、例え手元に貯蓄があってもそれは無いに等しいということです。
そもそも保険は、社会保障や貯蓄で賄えない分を補うための手段です。
基本に立ち返ってそう考えると、本当に必要で重要、なくては困る保障は、比較的経済的リスクの小さい医療保険ではなく、死亡保障や就労不能時の保障、ということになってくるはずです。
身近なリスクで一番〝取り返せそうな〟医療保険に重きを置くのではなく、本当になくては困るものに重点を置いて考えることが大切なのではないかと思っています。
もちろん、それらの保障も闇雲に必要という訳ではありません。
その方の経済状況、生活スタイル、価値観によっても、保険で準備すべき保障額は変わってくるのです。
いかがでしたでしょうか。
医療保険を機に、保険の意義についても考えるきっかけになりましたら幸いです。
当オフィスの総合コンサルティングでは、キャッシュフロー表を基に必要な保障額を算出し、生活スタイルや価値観なども考慮しながら準備すべき保険を検討していきます。
ちなみに単品メニューである「保険コンサルティング」の場合は、基本的に現在ご加入の保険との比較、点検、見直し案内となります。
現在より内容が改善されることは期待できますが、必要保障額の試算は前提となりません。